
[著者情報]
高橋 玲奈 (Takahashi Reina)
ランジェリーケア・アドバイザー / 元大手下着メーカー商品開発担当
大手メーカーでナイトブラ開発に5年従事。「手洗いは理想だけど、続かなければ意味がない」をモットーに、素材の科学に基づいた「忙しい女性のための現実的なケア」を提唱。
「疲れて帰った夜、洗面器に水を溜めるのが億劫で、ついそのまま寝てしまった…」
「手洗いが面倒で、せっかく買ったナイトブラを数回しか着ていない」
そんな経験はありませんか?そして翌朝、「またサボってしまった」「洗濯機で洗ったらダメになっちゃうかな」と、小さな罪悪感と不安を感じていませんか?
元メーカー開発者として、はっきり申し上げます。その罪悪感は不要です。
実は、プロとして一番避けたいのは「洗濯機を使うこと」ではなく、「ケアが面倒でナイトブラ自体を着なくなってしまうこと」なのです。
メーカーの公式見解としては「手洗い推奨」が基本ですが、実は条件さえ守れば、洗濯機でもナイトブラの寿命を縮めずに洗うことは十分に可能です。
この記事では、忙しいあなたが無理なく続けられる、プロが認める「洗濯機ケアの許容範囲と正解」を伝授します。今日から手洗いを卒業し、賢くナイトブラと付き合っていきましょう。
なぜ「洗濯機NG」と言われるの?メーカーの本音と素材の弱点
まず、敵を知ることから始めましょう。なぜ多くのメーカーは頑なに「手洗い」を推奨するのでしょうか?それは、ナイトブラの命である「補正力」を守るためです。
ナイトブラの補正力は、主にポリウレタンというゴムのような繊維によって生み出されています。このポリウレタンは非常にデリケートで、洗濯機の標準コースで発生する「強い摩擦」と「強力な遠心力」によって、簡単に断裂したり伸びたりしてしまいます。
つまり、「洗濯機そのもの」が悪いのではなく、「洗濯機の標準的な動き」が、ポリウレタンという素材の弱点を突いてしまうことが問題なのです。
逆に言えば、この「摩擦」と「遠心力」さえコントロールできれば、洗濯機はナイトブラにとって安全なツールになり得ます。

【結論】洗濯機でも寿命を守る「3つの鉄則」
では、具体的にどうすれば「摩擦」と「遠心力」を防げるのでしょうか?
ここからは、私が推奨している「洗濯機ケア・トライアングル」、つまり絶対に守るべき3つの鉄則をご紹介します。これさえ守れば、手洗いと遜色ないレベルでナイトブラを維持できます。
鉄則1:ネットは「ドーム型」一択
まず、道具選びです。100円ショップで売っているような「平らな洗濯ネット」を使っていませんか?
ブラジャー専用ネットと平型ネットには、カップ保護力において決定的な違いがあります。
平らなネットに立体的なナイトブラを入れると、カップが無理やり押しつぶされた状態で洗われることになります。これでは型崩れしてくださいと言っているようなものです。
必ず、カップの形状を守るためのフレームやクッションが入った「ドーム型(立体型)のブラジャー専用ネット」を使用してください。

鉄則2:洗剤は「中性」のおしゃれ着用
次に洗剤です。一般的な粉末洗剤や液体洗剤の多くは「弱アルカリ性」です。弱アルカリ性は皮脂汚れを落とす力が強い反面、タンパク質を分解する作用があり、動物性繊維(シルクなど)やデリケートなポリウレタンにダメージを与えやすい性質があります。
ナイトブラの洗濯には、必ず「おしゃれ着用洗剤(中性洗剤)」を使用してください。中性洗剤は繊維をコーティングしながら洗う成分が含まれており、洗濯中の摩擦ダメージを軽減してくれます。
鉄則3:脱水は「1分」が限界
そして、これが最も重要かつ、多くの人が見落としているポイントです。
全自動洗濯機の標準コースにおける脱水時間は、ナイトブラにとって長すぎます。
標準コースの脱水は通常6〜9分ほど行われますが、この長時間の遠心力こそが、カップを破壊し、アンダーゴムを伸ばす最大の原因です。
脱水は「1分」。これで十分です。水が滴らない程度になれば、あとは陰干しで乾きます。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 洗濯機の設定を「手動」に切り替え、脱水時間を「1分」に設定してください。もし設定変更ができない機種の場合は、「おしゃれ着コース」を選ぶか、脱水が始まって1分経ったら強制停止ボタンを押して取り出してください。
なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、ネットや洗剤には気を使っているのに、最後の脱水でナイトブラにとどめを刺してしまっているケースが非常に多いからです。この「脱水1分」を守るだけで、ナイトブラの寿命は劇的に伸びます。この知見が、あなたの成功の助けになれば幸いです。
【実践編】忙しい夜でも失敗しない「洗濯機ルーティン」
3つの鉄則を理解したところで、今夜から実践できる具体的な手順を見ていきましょう。
Step 1: 準備(ホックとパット)
ナイトブラにホックがある場合は、必ず留めてください。開いたままだと、フックがネットやレースに引っかかり、生地を傷める原因になります。
パットについては、一体型や縫い付けタイプはそのままでOKです。取り外し可能なタイプの場合、メーカーによっては「外して洗う」ことを推奨していますが、ドーム型ネットを使用し、脱水1分を守れるなら、入れたままでも大きな問題はありません。(ただし、パットのズレが気になる場合は外してネットの隙間に入れましょう)
Step 2: 洗濯機の設定
ナイトブラをドーム型ネットに入れたら、洗濯機へ。
ここで「おしゃれ着コース(ドライコース)」を選択するか、手動設定で「洗い3分・すすぎ1回・脱水1分」にセットします。
他の洗濯物(タオルやジーンズなど重いもの)と一緒に洗うのは避けましょう。押しつぶされる原因になります。
Step 3: 干し方(ここも重要!)
脱水が終わったら、放置せずにすぐ取り出します。
干す際は、「アンダー部分」を洗濯バサミで挟んで逆さに干すのが正解です。
よくやりがちな「肩紐(ストラップ)を吊るす干し方」は、水分を含んだブラの重みで肩紐が伸びてしまうためNGです。

よくある疑問:頻度は?乾燥機は?
最後に、私が講座などでよく受ける質問にお答えします。
Q. 見た目が汚れていなくても、毎日洗うべきですか?
A. はい、毎日洗ってください。
「冬場で汗をかいていないから」といって数日着続ける方がいらっしゃいますが、人間は寝ている間にコップ1杯分の汗をかきます。目に見えない皮脂汚れは時間が経つと酸化し、生地(ポリウレタン)を劣化させる原因になります。「着たら洗う」が基本です。
Q. 乾燥機や浴室乾燥機は使ってもいいですか?
A. 乾燥機(タンブラー乾燥)は絶対NGです。
ポリウレタンは熱に非常に弱く、乾燥機の熱風を当てると一発で伸縮性を失い、ボロボロになります。浴室乾燥機を使う場合は、温風が直接当たらない場所に干すか、「涼風モード」を使用してください。
Q. 買い替えのサインは?
A. 「着け心地が楽になった」と感じたら要注意です。
見た目が綺麗でも、アンダーが緩くなったり、肩紐が落ちやすくなったりしたら、それは補正力が寿命を迎えたサインです。一般的に、毎日着用して適切にケアした場合の寿命は約3〜4ヶ月(約100回洗濯)が目安です。
無理な手洗いより、賢い洗濯機ケアを
「丁寧な暮らし」ができなくても、自分を責める必要はありません。
現代を生きる忙しい私たちにとって、便利なツールである洗濯機を賢く使うことは、決して「サボり」ではなく「生活の知恵」です。
- ドーム型ネット
- おしゃれ着用洗剤
- 脱水1分
この3つさえ揃えれば、あなたのナイトブラは十分に長持ちします。
今夜からは、洗面器の前でため息をつくのはやめましょう。正しい知識と道具を味方につけて、美胸ケアと自分のリラックスタイムの両方を守ってくださいね。
[参考文献リスト]
- ブラジャーの正しい洗い方・干し方 – Wacoal
- ブラジャーの洗い方!洗濯機でも型くずれせず洗える簡単お洗濯のコツ – Lidea (Lion)
- 洗濯機のコースの使い分け(標準・おいそぎ・手造り・おしゃれ着など) – 日立の家電品